街で見かけるお馴染みのインドカレー店が、いま大きな転換期を迎えています。最近ニュースなどで「インドカレー店がビザ厳格化でピンチなのはなぜ?」という話題を目にすることが増えましたよね。長年、私たちの食卓を楽しませてくれたナンやカレーの文化が、在留資格の審査強化や法律の改正によって、これまでにない厳しい状況に立たされています。独立を夢見て来日したコックさんや、すでに自分のお店を持っている経営者の方々が、なぜ今これほどまでに苦労しているのか、その理由をひも解いていきたいと思います。

今回の記事では、技能ビザにおける10年の壁や、2025年に控えている経営管理ビザの大改正など、お店の存続に関わる深刻な問題について私なりにまとめてみました。これからインド料理店を始めたいと考えている方や、お気に入りのお店の今後が気になる方にとって、現状を整理する助けになれば嬉しいです。この記事を読むことで、以下のポイントについて理解を深めることができます。
- 技能ビザ取得における10年以上の実務経験証明が厳格化された理由(※「要件そのもの」が急に変わったというより、運用上の確認が厳しくなったと言われる点を含みます)
- 2025年10月から施行される経営管理ビザの3,000万円要件という高いハードル(※要件の適用のされ方や経過措置の有無などは個別に確認が必要です)
- インネパ店が抱える構造的な収益性の低さと過当競争の現状
- 特定技能制度の活用や今後の健全な店舗経営に向けた戦略的アプローチ
インドカレー店でビザ厳格化が進みピンチな理由とは
なぜ今、インドカレー店を取り巻くビザの環境がこれほどまでに厳しくなっているのでしょうか。その背景には、過去の不正申請への対策や、外国人労働者の受け入れ体制をより適正化しようとする国の強い動きがあります。まずは現場で起きている具体的な変化について見ていきましょう。
技能ビザ取得で10年の実務経験証明が困難な現状
インド料理やネパール料理のコックとして日本で働くためには、基本的に「技能」という在留資格が必要です。この資格を取得するための最大のハードルが、「10年以上の実務経験」という条件です。本場での確かな技術を持っていることを証明するための期間ですが、最近はこの証明が非常に難しくなっています。
以前であれば、母国のレストランが発行した在職証明書があれば比較的スムーズに認められることもありましたが、現在はその「中身」が徹底的に精査されています。10年という月日は決して短くありません。その期間、本当に対象の店舗で調理に従事していたのか、客観的な証拠が厳格に求められるようになっているのです。ここでいう「厳しくなった」は、制度要件が突然変わったというよりも、提出書類の真正性確認や整合性確認が運用上より丁寧になった、といった意味合いで語られることが多い点も押さえておきたいところです。
技能ビザの「10年」には、母国の調理学校で学んだ期間を含めることができる場合もありますが、基本的には現場での実務経験が重視されます。
在職証明書の偽造発覚により審査が精密化
審査が厳しくなった背景の一つに、過去の書類偽造問題が指摘されています。残念なことに、一部のブローカーが介在し、実際には働いていないレストランの在職証明書を販売するといった不正が相次いだと言われます。こうした問題意識もあって、入管当局は提出された書類の真正性をより慎重にチェックする傾向が強まっている、という見方があります(※ただし個別案件の判断基準や確認方法は公表されないことも多く、断定ではなく「傾向」として捉えるのが安全です)。
具体的には、証明書を発行したレストランが実在するかはもちろん、記載された電話番号に直接確認が入ったり、当時の給与明細や納税記録の提示を求められたりすることもあります。たとえ本人が真面目に10年働いていたとしても、古い職場の記録が残っていなかったり、連絡が取れなかったりすることで証明ができず、ビザが不許可になるという悲劇も起きています。これがまさに、現場が「ピンチ」と言われる大きな要因です。さらに、国・地域によっては昔の雇用記録の保管が十分でない場合もあり、そのギャップが「真面目に働いたのに証明できない」という問題を深刻化させます。
専門性の証明に欠かせないタンドール設備の重要性
技能ビザの審査では、働く人のスキルだけでなく、「その店が本当に熟練した調理師を必要とする店か」という店舗側の実態も問われます。インド料理店においてその説明材料として挙げられやすいのが、ナンやタンドリーチキンを焼くための土窯「タンドール」です。
ただし重要な前提として、タンドールの有無それ自体が法律上の“絶対条件”として明文化されているわけではありません。それでも、「熟練のインド料理人を雇います」と言いながら、厨房にタンドールがなかったり、冷凍のナンを温めるだけの設備しかなかったりする場合、「専門的な技能は不要ではないか」と判断されるリスクが高まると考えられています。最近では厨房の図面や写真だけでなく、メニュー構成との整合性も厳しくチェックされるため、小規模な店舗ほどその説明に苦慮するケースが増えています。ただし、オーブン等で代用する場合でも、調理工程や提供メニューとの整合性を含めて論理的な説明ができれば認められる可能性はありますが、ハードルが高いことに変わりはありません。要するに「タンドールが必須」というより、「熟練技能が必要な業務実態を説明できるか」が問われる、という捉え方がより正確です。
ネパール人経営者の急増と市場飽和の歴史的背景
日本のインド料理店の多くが、実はネパール人によって経営されている「インネパ店」であることは、今や広く知られるようになりました。2000年代以降、規制緩和の影響もあり、コックとして来日したネパール人が独立して自分のお店を持つケースが爆発的に増えました。
しかし、あまりに急激に店舗が増えすぎたため、現在は激しい過当競争にさらされています。どの店も「チーズナンとバターチキンカレー」といった似たようなメニューを安価で提供せざるを得ず、経営が圧迫されています。この「儲からない構造」が、結果として社会保険の未加入や低賃金労働を招き、さらなるビザ更新の厳格化を招くという負のスパイラルに陥っているのです。もちろん全ての店舗がそうだと決めつけることはできませんが、利益余力が薄い業態ほどコンプライアンス対応の負担が重く感じられ、結果として審査上の説明コストも上がる、という構図は想像に難くありません。
偽装雇用や不法就労の横行が入管の警戒を招く
さらに深刻なのが、「ビザ目的」の不正な雇用実態です。調理師として呼び寄せながら、実際には人手不足の工場や建設現場に派遣したり、店内で単純作業ばかりをさせたりする「偽装雇用」が一部で横行しました。また、家族滞在ビザで呼び寄せた家族を、制限時間を超えて働かせる不法就労の問題も後を絶ちません。
こうした不正が相次いだことで、入管当局はインド・ネパール料理業界全体に対して非常に厳しい「疑いの目」を向けるようになりました。真面目に経営しているオーナーまでが、同じ国籍や業種というだけで厳しい審査の対象となってしまうのが現状の苦しいところです。なお、審査の厳しさは地域や申請類型、個別事情によっても左右されるため、「必ずこうなる」と断定せず、個別ケースでの備えが重要になります。
インドカレー店がビザ厳格化でピンチなのはなぜか解説
これまでの問題に加え、これからの経営を左右する「制度の大きな壁」が迫っています。特に経営者としての在留資格に関わる改正は、小規模な店舗にとって存続の危機と言っても過言ではありません。なぜこれほどまでに厳しい内容になっているのか、その詳細を見てみましょう。
2025年10月施行の経営管理ビザ改正の衝撃
いま業界内で最も注目され、恐れられているのが2025年10月16日に施行予定の「経営・管理」ビザの要件改正です。これまでは、外国人オーナーが日本で起業する際のハードルは国際的に見て比較的低めと言われてきましたが、政府はこの基準を大幅に見直す決定をしました。なお、制度改正は「一律にこうなる」と単純化しづらく、申請者の立場(経営者か管理者か)や事業規模、体制の作り方によって満たし方が変わり得るため、ここでは全体像の方向性として整理します。
この改正の目的は、安易な起業を防ぎ、日本国内で真に持続可能で社会に貢献できるビジネスのみを存続させることにあります。しかし、現場の感覚からすれば、あまりに急激な方針転換であり、多くの個人経営者が「今のままではお店を続けられない」と不安を募らせています。さらに、制度の“文言”だけでなく、実務上は事業計画や資金の出所、雇用・労務管理の実態説明など、総合的な整合性が問われるため、準備不足だと対応が難しくなる可能性があります。
資本金3000万円への大幅な要件引き上げの壁
改正内容の中でも特に衝撃的なのが、投資額(資本金)の要件です。これまでは「500万円以上」というのが一つの大きな基準でしたが、新制度では「3,000万円以上」へと一気に6倍も引き上げられます。ここは非常に大きな変更点として語られますが、実際の適用のされ方や、体制要件との組み合わせ、更新・変更の場面での扱い、そして経過措置(猶予)などは個別の状況によって確認が必要です。したがって「全てのケースで即座に同じ対応が必要」と短絡せず、公式の要件整理や専門家の確認を踏まえて判断することが大切です。
数年間のコック生活で必死に貯めたお金や、親戚から集めた500万円でようやく独立したようなオーナーにとって、3,000万円という金額は現実的ではありません。これは事実上、個人レベルの零細な経営を排除し、十分な資本力を持った「組織としての経営体」のみを認めるという、非常に厳しいメッセージです。なお、正確な要件や特例、経過措置の有無や内容については必ず最新の出入国在留管理当局の発表を確認してください。あわせて、資本金だけでなく、資金の“出所の説明”や事業の継続可能性をどう示すかも重要になり得ます。
日本人雇用や高い日本語能力が求められる新基準
お金の問題だけではありません。新制度では、「日本人または永住者等の常勤職員を1名以上雇用すること」も義務付けられるようになります。これまでは家族や同胞のアルバイトだけで回していた店舗も、この条件を満たさなければ経営管理ビザの取得や更新が難しくなる可能性があります。ここでいう「常勤」の解釈や、雇用の実態(社会保険、賃金台帳、労働時間管理など)も含めて整合性が見られる可能性があるため、書類を揃えるだけでなく運用面での備えも必要になります。
また、経営者自身の資質として、日本語能力(たとえばCEFR B2相当と整理されることがあり、目安としてJLPT N2程度と説明されることもあります)や、3年以上の経営経験、あるいは高い学歴なども求められるようになります。加えて、要件の満たし方は「申請者本人だけでなく、経営体制(常勤職員や共同経営者など)として満たす」形で整理される場合もあり得るため、どの要件を誰が担保する設計にするかが実務上は大きなポイントになります。現場で料理を作ることには長けていても、日本の公文書を理解し、複雑な事業計画を立てられる能力があるかどうかを、国が厳しくチェックするようになるのです。
特定技能制度への移行に伴うコストと義務の負担
技能ビザの「10年の壁」を越えられない場合の救済策として注目されているのが、2019年に始まった「特定技能」制度です。試験に合格すれば10年の経験がなくても働けるため、一見するとメリットが大きいように思えます。しかし、これにも課題があります。
特定技能活用の注意点
- 登録支援機関への支援委託費など、月々のコストが発生する(※自社支援の可否や要件、契約形態によって負担感は変わります)
- 日本人と同等以上の給与、社会保険加入など、厳格な労務管理が必須
- 「特定技能1号」では原則として家族を日本に呼び寄せることができない
家族経営を基本としてきたインネパ店にとって、家族を呼べないことは大きな痛手です。また、しっかりとした利益が出ていない店舗では、支援コストや社保負担を賄いきれず、導入を断念するケースも少なくありません。さらに、在留資格ごとに従事できる業務範囲や求められる体制が異なるため、「どの制度が最適か」は個別に検討する必要があります。
原材料高騰と低利益率による経営体力の限界
制度の変化と同時に、経済的なピンチも追い打ちをかけています。近年の円安や世界情勢の影響で、小麦粉、油、乳製品、そしてインドから輸入するスパイスの価格が跳ね上がっています。もともと客単価を低く設定しがちなインドカレー店にとって、原価の上昇は利益を根こそぎ奪う死活問題です。
「ビザを維持するために多額の資金や日本人雇用が必要なのに、肝心の本業で利益が出ない」というジレンマ。この状況を打破するためには、ただ安さを売りにするのではなく、お店独自の価値を高めて客単価を上げるような、根本的な経営改革が求められています。加えて、値上げの説明、品質の見せ方、仕入れの最適化、固定費の見直しなど、地道な改善の積み重ねが不可欠になってきます。
淘汰の時代を生き抜くための戦略と産業の再編
今後数年で、日本のインド料理業界は大きな淘汰の波に飲まれるでしょう。しかし、これは裏を返せば、「適正なルールを守り、価値ある料理を提供する店」が正当に評価される時代の幕開けでもあります。生き残るためには、以下のような対策が必要だと私は考えます。
| 戦略項目 | 具体的な取り組み内容 |
|---|---|
| 財務基盤の強化 | 2025年に向けた計画的な増資と資金調達の準備(※資金の出所説明や資金計画の整合性も含めて準備する) |
| 日本語・教育 | 経営者自身の学習や、スタッフの教育体制の構築(※要件の整理は公式情報に合わせて確認する) |
| 店舗の差別化 | 特定の地域料理への特化や高付加価値メニューの開発 |
| コンプライアンス | ブローカーを排除し、行政書士等の専門家と正しく連携(※労務・税務・社保も含めた体制整備) |
インドカレー店がビザ厳格化でピンチな理由のまとめ
ここまで見てきた通り、インドカレー店がビザ厳格化でピンチなのはなぜかという問いへの答えは、「過去の不透明な拡大モデルに対する、国を挙げた制度的なリセットが始まったから」だと言えるでしょう。10年の実務証明や3,000万円の投資といった厳しい条件は、日本社会で誠実に、そして持続可能にビジネスを行えるかどうかを問う厳しい試験のようなものです。なお、制度は「資本金だけ」「日本語だけ」と単独で語ると誤解が生じやすく、実際には体制・実態・計画・コンプライアンスを含めた総合判断になり得る点も意識しておきたいところです。
この変化は非常に苛烈ですが、乗り越えた先には、ブラックな環境や不正から解放された、新しい外国人経営の形が見えてくるはずです。もしあなたがお店のオーナーであれば、まずは早めに信頼できる行政書士や専門家に相談し、自分の状況を正確に把握することをお勧めします。正確な情報は必ず公式サイトや窓口で確認し、ご自身の将来に向けた最善の判断をしてくださいね。私たちが大好きなカレー文化が、より良い形で未来に残っていくことを願ってやみません。
※ビザの要件や法律の解釈は個別の状況により異なります。具体的な手続きについては、必ず出入国在留管理当局や専門の行政書士にご相談ください。
この記事が、皆さんの疑問を解消するきっかけになれば幸いです。もし気になることがあれば、またいつでも聞いてくださいね。
【必ず公式でご確認ください】本記事は制度の概要や一般的に語られる傾向をもとに整理したもので、法令・運用・必要書類・経過措置・審査基準は更新される可能性があります。万が一情報に誤りがあるといけないので、最終的には出入国在留管理当局(公式サイト・窓口)の最新発表で必ず確認し、必要に応じて行政書士などの専門家にも相談したうえで判断してください。