【とおかし図鑑】Vol.06「御菓子司 昇月堂」
〜特注の木型でつくる練りきりのかわいらしさにほれぼれ〜

めで鯛・宝舟
「御菓子司 昇月堂」(甲子園口)のとおかしは、福々しい「めで鯛・宝舟」
「とおかし」とは、西宮神社の十日参り(4月〜翌年3月)の際に配られるお菓子のこと(※1月は除く)。
2017年度から始まった「とおかしプロジェクト」では、1年間に西宮市内の11の和菓子店が月替りでとおかしの制作を担当しており、それぞれのとおかしは、毎月10日限定で各店舗にて販売されます(※詳しくはこちら)。

この連載「とおかし図鑑」では、市野亜由美(ライター/西宮在住)が、それぞれのお菓子と和菓子店の魅力に迫ります! 第6回は、JR・甲子園口駅の南側にある「御菓子司 昇月堂」へ。同店の当番月は2018年6月、配布される和菓子は「めで鯛・宝舟」でした。

昭和元年に創業。甲子園銘菓も並ぶ

とおかし図鑑:御菓子司 昇月堂
「御菓子司 昇月堂」は、すずらん通り商店街の一角にあります
昭和元年(1926年)創業の「御菓子司 昇月堂」。こちらでは、わらび餅、団子、羊羹といった和菓子屋さんでおなじみの商品とともに、甲子園にちなんだお菓子が存在感を放っています。
たとえば、手焼きのフワフワ生地に粒あんをはさんだどら焼きも阪神タイガースの象徴である縦じま模様! その名も「甲子園とら焼き」。
柔らかい求肥のお餅にきな粉をたっぷりまぶした「すな餅」は、高校球児が記念に持ち帰る甲子園の砂の思い出を表現したものです。
とおかし図鑑:御菓子司 昇月堂
ショーウインドウの中に野球のボールが!
その他には、野球ボールをイメージした「球処(たまどころ)」というお菓子も。栗入りの黄身あんを焼き菓子生地で包み込んでいます。こうしたユニークな甲子園銘菓をお土産や贈答用にと求めて訪れる人も多いそう。

天然の素材にとことんこだわり、丹精を込めて一つひとつ

とおかし図鑑:御菓子司 昇月堂
「祖父が開いた店を大切にしていきたい」と話す大谷斉一(せいいち)さん
この日、お話をうかがったのは、大谷斉一さん。
「甘いものは好きですが、実は昔はケーキのほうが好きだったんですよ(笑)」
同店の二代目で一級菓子製造技能士の資格をもつ父・大谷源治さんと菓子作りに励んでおられます。しかし、子どものころは土日が休みでないことなどもあり、家業が気に入っていたとは言い難かったそうです。
「でも、20代になった辺りで、和菓子のおいしさがわかるようになりはじめまして......」と斉一さん。
サラリーマンを経て、ついに和菓子職人の道へ。
「やっぱり、根っから好きなんでしょうね」と笑顔。

約10種の上生菓子などをはじめとした商品は、天然素材にとことんこだわり、一つひとつ丹精を込めて作っているといいます。
「自分が食べて、まずかったら売ろうと思えません。お客さまに満足していただかないと、という思いが常にあります」

食感の違う2種の上生菓子の詰め合わせ

とおかし図鑑:御菓子司 昇月堂
落ち着いた雰囲気の包装紙に赤い掛け紙が映えます
同店のとおかしプロジェクトへの参加は前年につづいて2回目。
前回は、鯛と米俵をかたどった練りきり(白あんに求肥などつなぎの食材を加えて調整し、練った上生菓子)の詰め合わせでした。
「中身をこしあんと白あんにし、変化をつけていたのですが、今年は食感も全然違うものにしたかったんです」と斉一さん。今回は上用まんじゅうと練りきりの2種類が味わえるものにしました。

練りきりの「めで鯛」の木型は、このためにオーダーした特注品。昨今、木型職人が減ってしまい、和菓子の木型は、貴重な伝統工芸のひとつとも言われているそうです。丁寧に彫られた背びれやうろこなど、繊細な部分の美しさにほれぼれ。きりっとしていながら、かわいらしさもあります。
中のこしあんには北海道産の小豆を使用。しっかりとした小豆らしい風味を感じられるのが特徴です。

一方、上用まんじゅうのテーマは「宝舟」。山芋に特上のコシヒカリの米粉を混ぜて蒸し上げた皮はきめが細かく、上質なこしあんとの相性もぴったり。表面のほわんとした紅色は鯛や縁起の良さを、水色は海を表し、焼き印の帆の部分には、「宝」の文字と七福神が描かれています。
包みをほどいた瞬間に、おめでたい気分になれる詰め合わせですね。

バラエティー豊かな「フルーツ大福」も人気

とおかし図鑑:御菓子司 昇月堂
さまざまなお菓子が並び、目移りしてしまいます
とおかし図鑑:御菓子司 昇月堂
昔ながらの赤飯のファンも多数
とおかし図鑑:御菓子司 昇月堂
取材時には、ピオーネ、シャインマスカット、いちじくなどの「フルーツ大福」が並んでいました
新鮮な果物を使った「フルーツ大福」も人気です。イチゴやキウイ、桃、パイン、フルーツトマトなど、季節や仕入れで内容が変わります。たとえばイチゴにはこしあんを、キウイや桃には白あんといったように、素材や組み合わせへのこだわりが光ります。

「これまではなじみの方が多い店だったのですが、とおかしを始めてから『福にあやかりたい』と芦屋や伊丹から来てくださる方も増えて、驚いています。こうしたことがきっかけとなり、和菓子を食べていただく機会が増えればいいですね」(斉一さん)

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「毎月十日はとおかしの日」。西宮のスペシャルな銘菓を楽しめる特別な機会をお楽しみください。
※11店舗の「とおかし」は、こちらの紹介リーフレット(PDF)でご覧いただけます。

市野亜由美
市野亜由美
西宮市在住のライター。"どこへでも実際に行ってみたい派"です。読者に「私も!」と思ってもらえるような、再現性のある情報を届けられるとうれしいです。好きなジャンルは、食べものやアート。
NISHINOMIYA COMMONS編集部
ライター・市野亜由美
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