【とおかし図鑑】Vol.07「成田家」〜"紅白の三升もなか"が入った詰め合わせ〜

えびす舞 3種類のもなか
「成田家」(羽衣町)の「えびす舞」。3種類のもなかが入っています
「とおかし」とは、西宮神社の十日参り(4月〜翌年3月)の際に配られるお菓子のこと(※1月は除く)。
2017年度から始まった「とおかしプロジェクト」によって、西宮市内の11の和菓子店が月替りでとおかしの制作を担当することになりました。それぞれのとおかしは、毎月10日限定で各店舗にて販売されています(※詳しくはこちら)。

この連載「とおかし図鑑」では、市野亜由美(ライター/西宮在住)が、それぞれのお菓子と和菓子店の魅力に迫ります!
第7回は、阪急・夙川駅から南へ歩いて3分の「成田家」へ。同店の当番月は2019年3月、配布される和菓子は「えびす舞」です。

夙川で開店して80年以上。市川團十郎に愛された味

とおかし図鑑:成田家
「成田家」の外観。現在の店舗は阪神・淡路大震災後に再建
「『成田家』という屋号は、歌舞伎役者の市川團十郎さんとのご縁からいただいたんです」と話すのは、3代目店主の奥光男さん。
「うちの店はもともと大阪にありました。9代目の團十郎さんが、明治31年(1898年)に大阪の歌舞伎座のこけら落としで、当店のもなかをご贔屓さんに配ってくださったのが始まりです」
以後、市川團十郎丈の定紋「三枡(三升・みます)」をかたどったもなかが発売され、人気商品になったとか。昭和13年(1938年)に夙川分店をオープン。当時は「團十郎最中 夙川分店」という店名で、昭和24年(1949年)に屋号を「成田家」と改めたといいます。
とおかし図鑑:成田家
お店の正面に掲げられた木製看板は10代目・市川團十郎の筆跡。左端には「三升書」と記されている
とおかし図鑑:成田家
「成田家」開店時のチラシ(コピー)
「90歳くらいのお客さまは、今でも『團十郎もなかを下さい』って買いに来られますよ」と奥さん。なんとも歴史を感じる話です。

奥の厨房で炊きあげられた自家製あん

とおかし図鑑:成田家
和菓子を作りつづけて約50年の店主・奥さん
とおかし図鑑:成田家
この銅鍋では約20kgのあんが炊けます。仕事を始めたころは、薪の火を使っていたそう
「成田家」のもなか、ようかん、どら焼きといったお菓子のおいしさのカギとなるのが、自家製のあん。お店の奥にある厨房に、奥さん自ら快く案内してくれました。大きな銅鍋や製あん器が存在感を放つ和菓子職人の仕事場です。大切に使い込まれた道具たちは美しく、厨房には凛とした空気が漂っていました。

奥さんに製あん工程について教えてもらうこと30分。通常のあんとはこしあんのことを指し、小倉あんはこしあんにシロップ漬けにした小豆の粒を混ぜたものなのだとか。その違いをはじめて知ってびっくり!
同店で使用する小豆は、北海道・十勝産。色、つや、舌ざわりなどにこだわって選んだ最上級のものを、長年培った職人の技と勘を生かして炊き上げます。
「うちならではのあんの香りやコク、爽やかさを楽しんでもらえるはず」と奥さん。

とおかしには、小豆あん、ハチミツ入り白あん、柚子あんがたっぷり

とおかし図鑑:成田家
とおかし図鑑:成田家
ふたを開けると、どーんとえべっさんが登場!
同店のとおかし「えびす舞」の箱には、えべっさんの絵の入った丸型もなかと、おめでたい紅白のもなかが収まっています。
「(もなかは)上生菓子のように、形を変えることがあまりできないので、もなかの皮に工夫をしています」
丸型もなかにプリントされたえべっさんも、鯛も、ニコニコ。見ているこちらも笑顔になれます。また、紅白のもなかにも注目。形は定番の三升もなかと同じですが、通常販売では青色・白色・焦がし色の3色(あんは小倉、柚子、栗)で、紅色は「とおかし」限定カラーだそう。こうした特別感もうれしいですね。
とおかし図鑑:成田家
「数日経って、あんの蜜がもなかの皮に少ししみてくると、しんなりしておいしい」と奥さん
3種のもなかには、それぞれ小豆あん、ハチミツ入りの白あん、柚子あんがたっぷりと詰まっています。夙川流域の桜のハチミツを使用したり、柚子は一つひとつ皮をおろして砂糖漬けにしたり、ここでも奥さんのこだわりが光っています。
そうそう、「実は、もなかのあんには寒天が入っているんだよ」と、ちょっぴりムチッとした食感の秘密も教えてもらいました。奥さんの和菓子づくりへのこだわりを聞いていると楽しくて、和菓子のことがさらに好きになります。

「うちはもなか屋さん」その言葉に込められた思い

とおかし図鑑:成田家
贈りものに人気のもなかの詰め合わせなども
とおかし図鑑:成田家
ショーケースの上に並ぶのは、おやつにぴったりな「どら焼き」
この日、取材していて印象的だったのは、「うちはもなか屋さん」という奥さんの言葉です。昔ながらのシンプルなもなかというお菓子の奥深さと、奥さんのもなかへのこだわりや愛情を感じます。
お店にはどら焼きなども並び、新商品も考案中だそうですが、奥さんいわく「もなか屋さんとして、もっとあんこを食べてもらいたい」とのこと。
なるほど、厨房は日々のお菓子が生まれる場所であるとともに、さらに多くの人にあんを楽しんでもらうための商品開発場&実験室でもあるのです。きっと次に来るときには、また新しいおいしいお菓子が生まれているんだろうなあと期待に胸をふくらませて、お店を後にしました。

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「毎月十日はとおかしの日」。西宮のスペシャルな銘菓を楽しめる特別な機会をお楽しみください。
※11店舗の「とおかし」は、こちらの紹介リーフレット(PDF)でご覧いただけます。

市野亜由美
市野亜由美
西宮市在住のライター。"どこへでも実際に行ってみたい派"です。読者に「私も!」と思ってもらえるような、再現性のある情報を届けられるとうれしいです。好きなジャンルは、食べものやアート。
NISHINOMIYA COMMONS編集部
ライター・市野亜由美
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